こんにちは。設計の林です。
ロダン作「地獄の門」をご存じでしょうか?
ロダンというと「考える人」という像が有名ですが、これはもともと「地獄の門」という作品の一部として作られたものです。
ダンテ「神曲」地獄篇 冒頭に現れる門をモチーフにしており、そこにはこのような言葉が刻まれているそうです。
「汝等 こゝに入るもの一切の望みを棄てよ」
https://www.musee-rodin.fr/en/musee/collections/oeuvres/gates-hell より引用
「地獄の門」の世界に7つあるブロンズのうち、1つは上野の国立西洋美術館に、1つは静岡県立美術館にあります。
上野は屋外なのでなかなかゆっくり眺める気持ちになれませんが、
静岡のほうはロダン作品だけが展示されている立派な別館の真ん中に鎮座していて、たまに通って眺めていました。
とはいえあまり頻繁にも通えず、かねてよりレプリカを探していましたがこれがなかなか売っていません。
考える人のレプリカは数多存在するのですが、地獄の門は全くと言っていいほど無いのです。
そこで3Dプリンタで自前印刷してやろうと考えました。
データはスキャンするか、ネット上で購入するつもりでした。
しかしサンプルデータを眺めるうち、なぜめったにレプリカが作られないのか次第にわかってきました。
サイズに対して細部の作りこみが異常に微細なのです。
全体サイズ540 x 390 x 100 cmに対し、直径2~3cmほどの人間の腕がにょきと生えていたりするのです。
これを卓上サイズに縮小するときっと1mm以下の細さになってしまうでしょう。
一般的な3Dプリンタの積層ピッチは0.1mm~、ノズル径は0.2mm~なので印刷は不可能です。
芸術に対する工業の限界を示されたようで憮然としてしまいました。
うまい具合に元データを加工すればあわよくば、とも考えましたが、
「この門を複製するもの一切の望みを捨てよ」
そう言われたような気がして私は静かに諦めたのでした。
ちなみに写真は最近入手した手のひら大のマグネット。
突起をうまく処理してあり、多少ぬめっと感は否めませんがこれはこれでアリという感じです。
タグ: art, モノづくり, hayashi