筐体のデザインを外注したいけれど、何を用意すればいいのかわからない、という理由で相談をためらう方は少なくありません。実際には、完成した図面や仕様書は必須ではありません。 私たちがこれまで受けてきた筐体デザインのご相談を振り返ると、仕様書一式から始まったものはむしろ少数派で、一番多い持ち込みは試作品か内蔵物のCADデータです。実機が1台ある状態から始めたものも、構想を伝える言葉から始めたものもありました。

見積もりの前に必要なのは、資料の量ではなく「何ができていて、どこまでをゴールにするか」の共有だと私たちは考えています。

実際のご相談筐体デザインの依頼でいただくインプットの例

一番多いのは、試作品か内蔵物のCADデータです

「筐体をデザインしたい」「外装をきちんとした製品の形にしたい」というご相談で一番多いのは、動く試作品、または内蔵物(基板やユニット)のCADデータを持ち込まれるケースです。外側の図面や仕様書が無い状態でも、内蔵物の寸法と配置が分かれば外形の検討は動き出せるので、それで問題なく始められます。

実機1台のみの場合でも、実機を採寸して3Dデータ化するところから私たちが引き受けます。モノにもよりますが、だいたい3日から1週間の作業です。

もうひとつ、意外に多いのが市販品の持ち込みです。参考になる製品をお持ちいただき「これを、こういう感じにしたい」と伝えてもらう方法で、デザインの専門用語を使わなくても、サイズ感や質感の狙いが一度で伝わります。持ち込むものに迷ったら、この方法はおすすめできます。

言葉から始まったプロジェクトもあります

図面もモノもない状態で、構想を伝える言葉から始まったプロジェクトもあります。個人に近いベンチャーの方に多い始まり方です。

言葉から始める場合は、まず手書きスケッチや簡単なモックで方向性を探ります。最初のスケッチをお見せするまでは、早ければ1〜2週間ほどです。方向性を探るフェーズは早いに越したことはないので、作り込んだ1案に時間をかけるより、短い期間で繰り返し対話することを大事にしています。方向が定まってから、CADで形にしていきます。

ハンドツール型の装置を2方向から描いた手描きスケッチ。青いペンで外形と操作部、黒で影を入れた方向性検討段階のもの
方向性を探る段階のスケッチ。作り込まずに形の候補を素早く描き、対話の材料にする。

構想だけの状態から医療機器の製品化まで進めた例は、医療機器に参入したい、でもノウハウがないに書きました。

おすすめの進め方相談から最初の見積もりまでの流れ

ご相談は、製品仕様を固め切る前がおすすめです

作り込んだ部品配置データは、用意していただかなくて大丈夫です。機能が満たせるなら、よりよい使い方ができる形を提案するために、内蔵物のレイアウトを変えることはよくあります。レイアウトが1mmも動かせない状態だと外形がおのずと決まってしまい、デザインの余地がほとんど残りません。部品配置に限らず、装置の構成や操作方法といった製品仕様も同じで、固め切る前の設計の初期段階でご相談いただけるほど、提案の幅は広がります。

最初の打ち合わせには、手元にあるものをそのままお持ちください

試作品、内蔵物のCADデータ、実機、参考にしたい市販品、あるいは構想を伝える言葉。どの状態からでも始められます。図面や仕様書を整えてから相談しようとすると、その準備のぶんだけ時間がかかりますし、採寸や3Dデータ化のように私たちが引き受けられる作業を、先に抱え込むことにもなります。

ただし、設計の前提になる情報だけは、この打ち合わせで共有してもらう必要があります。

  • 私たちが手を入れられないコアの機構や部品の制約
  • 特殊な使用環境(設置場所、清掃や消毒の条件、温度や湿度など)
  • 想定するユーザー(誰が、どんな場面や姿勢で使うか)

外形をどこまで自由に動かせるかも、見積もりの範囲も、この3つで大きく変わります。書類にまとめる必要はなく、口頭で伺えれば十分です。

見積もりの前に、最初の区切りを一緒に決めます

見積もりに最低限必要なのは、何ができていて、どこまでをゴールにするかの認識合わせです。ここさえ共有できていれば、手元の資料が少なくても金額を出せます。

構想から始める場合は、仕様も最終形も、最初は誰にも見えていません。だから全体を一度に見積もろうとせず、「デザインの方向性がモックで確認できるまで」「展示会に出してフィードバックをもらえる試作機まで」のように、目的がはっきりした最初の区切りを決めて、そこまでを最初の依頼範囲にします。区切りまで進んだら、そこで見えたものをもとに、次の段階を改めて協議します。

PECについて

ペック株式会社(PEC・東京都国立市)は、医療機器・産業機器のプロダクトデザインと筐体・機構設計を一括で手がけるデザイン・設計会社です。

  • 対応範囲:プロダクトデザイン、筐体・機構設計、GUIデザイン、取扱説明書・テクニカルイラスト制作。デザインだけ、数画面だけといった部分的な依頼にも対応しています
  • 主な実績領域:透析用監視装置、手術支援ロボット、計測・分析機器などの医療機器・産業機器
  • 体制:デザイナーと機械設計者が同じ社内に在籍。創業2003年、これまでの取引メーカーは100社以上。GOOD DESIGN賞・iF DESIGN AWARD受賞

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