Clip-on Tuner
機能で差がつきにくい成熟したチューナー市場で、PECの狙いは「道具としての使い心地」。表示部と電池を分離して薄型・低重心にし、薄さと安定を両立する筐体機構を作り込みました。
対象:クリップ式チューナー(Pitchclip)
クライアント:株式会社コルグ
開発期間:約1年
楽器のヘッドに留めて使うクリップ式チューナーは、各社から数多く出ている成熟した市場です。機能や精度では差がつきにくく、「どう差別化するか」が出発点の課題でした。
PECが見つけた糸口は、見た目の装飾ではなく、構成そのものを見直すこと。薄さ・軽さ・安定感という、道具としての本質的な使い心地で抜きん出ることを狙いました。
表示部と電池をセパレートする構成 — 外装デザインと筐体機構設計を分けずに検討。表示部から電池を切り離して薄型化し、電池をクリップ側に配置して低重心化。「薄く・軽い見た目」と「挟んだときの安定」を、デザインと構造の両面から同時に成立させました。
可動表示部の機構と、回転部の断線対策 — 見やすい角度に動かせる可動式の表示部(最大120°)を採用。ヒンジ部では繰り返しの回転で配線が傷まないよう、ケーブルの取り回しと逃がしを設計し、断線しない可動機構として作り込みました。
「渋み」を付けた保持トルクの設計 — 動かせるだけでは、使ううちに角度がずれて使いにくくなります。回転部に適切な抵抗(渋み)を持たせ、任意の角度でしっかり留まりながら、操作は滑らかに——その手応えを機構の作り込みで詰めました。
この案件で効いたのは、デザインと機構設計を切り離さず、一つの手で行き来しながら詰めたことです。
「薄く・軽く」を突き詰めるほど、回転部の断線や保持トルクといった機構の難所が現れます。外装の狙いと機構の制約は、ふつう別々の担当の間で綱引きになりがち。PECは両方を自ら抱えていたからこそ、狙った佇まいを崩さずに機構側で解くという往復を、最後まで一貫して回せました。最初に描いたコンセプトをそのまま製品にできたのは、この進め方によるものです。
そしてこの関わりは、単発のデザイン提案では終わりませんでした。PECは設計チームの一員として、構想から量産まで長く伴走。薄さと安定の両立、回転部の断線対策、保持トルクの作り込みといった節目ごとに具体的な機構案を出し続け、試作と評価をともに重ねながら、コルグの技術的な判断を後押ししました。最初のコンセプトを量産品まで運びきれたのは、こうした地続きの協働があったからです。
道具は、薄く・軽く・確かであるほど、演奏の邪魔をしない。Pitchclipが長く定番であり続ける土台を、PECは筐体と機構の作り込みから支えました。